知的資産経営とは
知的資産経営という考え方は、1980年代に北欧を中心に始まったものです。日本では2005年に経済産業省が知的資産経営に関する研究会を立ち上げ、様々な施策の中に知的資産経営を取り入れるなどして、日本国内における知的資産経営の浸透を図っているところです。
経済産業省は数年前から知的資産経営WEEKを開催しています。また、行政書士会も知的資産経営WEEKシンポジウムを開催しており、当事務所の代表である丹所も知的資産経営WEEK2012 in愛知でパネリストを務めさせていただきました。
このように全国的な広がりを見せている知的資産経営とはどのようなものでしょうか?
知的資産、つまり人材、社風、理念、システム、ノウハウ、ネットワークなどは財務諸表(決算書)の数字には表れにくいものです。そのため、日々業務を行っている中で、「ここに知的資産があるよ」とは気づきにくいものです。
当事務所は「知的資産」を「裏方資産・黒子資産」という言葉で説明していますので、舞台のお芝居をイメージしてみて下さい。
舞台で女優さんがお芝居をしています。しかし、その女優さんが舞台でお芝居ができているのは、裏方さん・黒子さんたちが大道具小道具を準備したり、女優さんのお化粧をしたり、髪の毛を整えたり、照明や音響を担当したりなどして女優さんを引き立てているからなのです。決して舞台に上がってる女優さん1人ですべてをまかなっているのではありません。もしかしたらお芝居そのものが商品サービスであって、女優さん自身も黒子さんなのかもしれません。
企業の中も同じです。表に出ている商品サービス、経営者だけで成り立っているわけではありません。その商品サービスを作っている人、仕入れている人がいたり、様々なノウハウがあったり、商品化までのいろいろな工夫があったりして、ようやく商品サービスという表舞台に立っているのです。
今ある知的資産の1つでも欠けると、今行っている商品サービスの提供ができなくなったり、お客様に迷惑をかけてしまったりする恐れがあるものなのです。
そのため、自社にどんな知的資産があり、どのように作用しているのかを知ることが非常に大切なのです。
知的資産経営とは、こうした企業の知的資産を活かした経営のことをいいます。つまり、裏方を活かした経営のことで、どの企業も必ず知的資産経営を行っています。
しかし、それを無意識に行っているのか、意識して行うのかによって、人員の配置や事業計画の緻密性などが異なってきます。つまり業績向上へのプロセスや将来の実績に違いが出てくるのです。
そのため、戦略的に知的資産経営を行うことが大切です。
知的資産経営のプロセス
知的資産経営には認識、活用、開示という3つのプロセスがあります。
知的資産経営を行う第一のプロセスは、「知的資産の認識」です。つまり自社の本当の強み、知恵、他社との違いといった知的資産を知ることなのです。
このように知的資産を認識すると、活用したくなります。「宝の持ち腐れ」ということわざがありますが、せっかくある知的資産を利用しなければまったく意味がなくなってしまいますので、知的資産の活用が知的資産経営の第二のプロセスになります。
知的資産経営を行っていると、だんだん自社の知的資産を知らせたくなります。そんなわけで、知的資産経営の第三プロセスは「知的資産の開示」となります。
知的資産経営の意義と効果
知的資産経営は、知的資産を活用した経営で、知的資産の認識⇒活用⇒開示というプロセスを経ます。
知的資産の日々の業務で十分に活用されている知的資産もあれば、埋もれてしまっている知的資産もあります。
日々活用されている知的資産については「より良い活用」ができるように、あまり活用されていない知的資産については「存在に気づき、活用」できるようにすることが有効です。
そして自社の知的資産を開示することで、取引先様やお客様に安心感を持ってもらったり、求職者に効果的にPRしたり、金融機関に一定の評価をしてもらったりすることが期待できます。
このように知的資産経営は、自社をより良くするだけでなく、対外的な自社の価値を増大させることにも役立つのです。
知的資産経営の本質
知的資産経営をしましょう。いや、経営者が認識しているかいないかだけで、どの企業も必ず知的資産経営を行っています。
ただ、せっかく知的資産経営を行っているのだから、きちんと自社の知的資産を整理して、知的資産を有効に活用して、より一層知的資産経営をしましょう、というべきなのかもしれません。
それでも知的資産経営という言葉は漠然としていますよね?
会社の中の裏方や、黒子となっている人やモノや想いやノウハウなどを整理して有効に活用するなんていうことを考えるくらいだったら、今日の売上を上げる方が先だ!
そんな経営者さんもいらっしゃると思います。わかります、そういいたくなるお気持ちも。
消費税が上がり、物価は高騰しているのに、自社の販売価格は叩かれる。そんな中どうするんだ!そんな気持ちがわかるわけないだろう!そんなお声も聞こえてきます。
しかし、今一度考えてみてください。
自社の販売価格が叩かれたとき、どのように対応していますか?
まったく同様の商品が安価であちこちで販売されているものでしたらまた違う方法を考えないといけませんが、もしも御社の商品が御社でしかできないものでしたら、言われたから値下げする、ということを繰り返していては会社がもちませんよね?
御社にしかできない技術やノウハウを使った商品であるならば、「ブランド化」をして、契約形態を見直してみたらいかがでしょうか?
今の契約は適切な内容ですか?
今の価格は研究開発までトータルで考えて合理的な金額ですか?
御社がもしもブランド化できる技術やノウハウを持たれているのであれば、フランチャイズ化するという道もあるのです。
知的資産経営の本質は、強い会社にすることです。そのためにブランド化が必要であれば、自社の知的資産を整理、見える化、開示をしてブランド化していく必要があります。
自社が強い会社になるために「人」が必要であれば、求職者が求める現実的な理想像をストーリーとして語り、自社に共感した人を採用しなければなりません。そのためにも知的資産・知的資産経営の整理、見える化、開示が必要になります。
このように、自社がどのような形で強い会社になりたいのか?そのために何が必要で、どのようにしたらその必要なものを入手できるのか?そんなことを整理して、その目標に向けて経営していくことこそが知的資産経営なのです。
知的資産経営という難しい言葉にとらわれることなく、知的資産経営を行って下さい。全力で誠意をもってご支援させていただきます。お気軽にお問合せ下さい。
知的資産経営における事業計画
知的資産経営の結果が現状の財務諸表(決算書)となっています。
毎年10%ずつ売上を増加させていく、という事業計画を立てても、手さぐりで思うように結果を出せていない企業もあると思います。そのような企業は知的資産を十分に活用できていない可能性もありますが、無謀な計画を立てている可能性もあります。
このような企業においては特に、日々の業務に十分活用できている知的資産、もっと活用できる知的資産、宝の持ち腐れになっている知的資産に分類して、どのように活用できるのか、その結果そういう業績を見込めるのかを考えていく必要があります。
これが知的資産経営における事業計画の立て方です。自社とじっくり向き合って事業計画を立てることが大切です。